再エネ主力時代の需給運用と計画(5-6)蓄電池出力と容量の評価(補遺)
表5.2にここまでの計算に用いた蓄電池出力(3σ)と容量(8h)の数値を記します。また、右側の欄には2026年5月末(一部4月末)における蓄電池契約済容量などを再度記しました。なお、今回の計算では沖縄を除く全国の需要と再エネ発電量(太陽光+風力)の電力量が等しくなるよう再エネ発電量を一律に増加(8.20倍)させていますので、各エリアの需給には必ずしも関係ない蓄電池容量が設定されています。例えば系統容量(最大電力)の大きさがほぼ等しい中部と関西のエリアを比べると、蓄電池容量は関西の方がより少ない状態になっています。同じように北陸エリアも蓄電池容量が小さいので、5章5節の関西と北陸の計算結果において、蓄電池SOCがゼロになっている確率が高いことと関係していると考えられます。
表5.2 検討に用いた蓄電池出力と容量(実績は2026年5月末)

注:*を付したエリアは2026年4月末。**沖縄は計算対象外
次に蓄電池出力と容量の評価を行います。
まず蓄電池出力については各エリアの需要-再エネ出力の分布の標準偏差σを基準として3σ値を選んで計算しました。この3σが妥当なのかを検証します。検証のための蓄電池時間容量については8時間値(8h)に固定しています。比較は1σから5σまでパラメータを変えて計算した結果により行っています。したがって、蓄電池容量はσの増加に比例して大きくなっています。
図5.12は負荷しゃ断率の比較です。負荷しゃ断率は各エリアの年間総負荷しゃ断量/総需要(しゃ断前。いずれも電力量kWh値)で計算しています。

図5.12 負荷しゃ断率
図中横軸はそれぞれ1σ8時間から5σ8時間の5ケースを示しています。1σから2σまでは負荷しゃ断率が向上しますが、3σ以上のケースでは減少度合いは少なくなりほとんど変わらないことがわかります。
一方、再エネ抑制量を図5.13に示します。再エネ抑制量は各エリアの年間総再エネ抑制量/総発電量(抑制前。いずれも電力量kWh値)で計算しています。

図5.13 再生可能エネルギー抑制率
この結果によりますと1σから2σへの増加ではどのエリアも抑制率が減少していますが、その後の経過は抑制率が高いエリアと低いエリアで異なる挙動になっています。2σから3σへの変更で再エネ抑制量が増加するエリアがあることと、先の負荷しゃ断量の減少量を総合的に判断すると3σあたりがバランスに優れていると言えるでしょう。
次に蓄電池SOCが0%である確率を図5.14に示します。

図5.14 蓄電池SOCが0%になる確率
蓄電池SOCがゼロになっている確率は蓄電池出力の増加(比例して蓄電池容量も増加)に応じて減少します。1σから2σへの増加でSOCゼロ率の減少度合いが大きいエリアが多いですが、その後はほぼ直線的に減少しています。
次に、蓄電池SOCが100%である確率を図5.15に示します。

図5.15 蓄電池SOCが100%になる確率
ほとんどの場合σが大きくなる(蓄電池容量が大きくなる)と蓄電池SOCが100%である確率は高くなっています。前述のように、蓄電池容量はσの増加に比例して増大していますので、単に蓄電池の容量不足が原因というわけではないようです。ただしそのレベル(確率の大きさ)はSOCが0%になっている確率よりは低く、現在の蓄電池出力および容量の条件ではSOCが0%になりやすいということがわかります。
残ったパラメータである容量(蓄電時間数)の評価について以下に記します。
これも出力は3σで固定しています。確保する蓄電池の容量を、2時間(2h)から12時間(12h)までは2時間単位、それに付加して24時間(24h)のケースを計算しました。従って12時間(12h)までの横軸は等間隔ですが、24時間(24h)は左に詰めて表示されていますので全体としては完全な等間隔ではありません。
図5.16に負荷しゃ断率を示します。

図5.16 負荷しゃ断率
エリアによって違いはありますが、すべて時間数が大きくなれば(容量が大きくなれば)負荷がしゃ断される率は低くなっています。24時間までの範囲であれば、ほぼ容量に比例して負荷しゃ断率は低くなるように見えます。そのしゃ断率の範囲は少ないエリアで5%程度、多いエリアで15%から10%程度です。これは現在の系統運用の実態から見ると著しく高い率と言えますが、調整力が蓄電池しかない系統ではこの程度の負荷しゃ断率はおそらく通常の状態です。
再エネ抑制率を図5.17に示します。

図5.17 再エネ抑制率
再エネ抑制率についても傾向は同じです。再エネ抑制率は蓄電池の容量やエリアによって異なりますがおよそ2.5%から17.5%です。抑制が大きいケースでは同じケースの負荷しゃ断率よりも若干高い率となっています。このしゃ断率は現在の系統運用と比べると太陽光発電が大きい九州エリアで2倍程度であり、負荷しゃ断率の高さほど意外性はありません。
次に蓄電池SOCがゼロになる確率と100%になる確率をそれぞれ図5.18、図5.19に示します。

図5.18 蓄電池SOCがゼロになる確率

図5.19 蓄電池SOCが100%になる確率
SOCがゼロになる確率は北陸、関西の両エリアで高く、SOCが100%になる確率は北海道、東北の両エリアで高くなっています。九州エリアはゼロになる確率は低いグループにいますが、100%になる確率は中程度です。
以上容量を変化させて計算した場合、最大出力の充放電以外のケースでは容量は大きいほど結果はよいということになりました。しかし、容量を大きくしても、例えば12時間の結果と比べて24時間の場合が半分にはなっていないことから、あまり大きい容量を選んでもコストメリットがないだろうと考えられます。
先の蓄電池容量を8時間に固定して出力を変化させた検討では、3σあたりがバランスに優れていたことと、この出力を3σに固定して容量を変化させた検討では、容量を大きくすれば効果は高くなりますが、むやみに大きくしてもコストメリットがなくなることを合わせ考えると、今回の検討で3σ8hを選んだことは妥当であったのではないかと考えられます。

