再エネ主力時代の需給運用と計画(5-5)再エネと蓄電池のみで構成された系統における需給計算結果(送電容量無限大、蓄電池容量制約あり)
さて、前節までで前提条件は説明しました。この節では実際の計算結果を見ることとします。
まず結果の見方ですが、全国に9エリアがあり、それぞれに366日(2023年度は2月にうるう日がある)、24時間の結果があります。全体を一覧するのは紙面では不可能ですので、必然的に特徴的な日、期間、エリアに限って結果を説明するものとします。
(1)事例1:需要のしゃ断がなく昼夜をとおして蓄電池による調整が可能であるケース
2023年4月は各エリアにおいて需要のしゃ断が発生していません。
4月1日から7日までの一週間について東北エリアの調整状況を見ると以下のようになっています。

| 図 5.2 東北エリア2023年4月1日-7日 |
図中のゼロより上にある黒実線は需要、緑は再生可能エネルギー発電、青は蓄電池の放電です。またゼロより下側にある深緑は再エネの抑制、青は蓄電池の充電、淡い茶色は連系線による送電(他系統への送電)です。この期間は需要のしゃ断と連系線による受電は発生していません。
図中の下に示した赤い線は蓄電池の充電量を示すSOCであり、この期間はほぼ75%から100%の範囲にあって、蓄電池は余裕を持った状態で夜間を含めて需要に電力を供給していることがわかります。ただ4月は太陽光発電量が多いので、蓄電池SOCが100%(満量充電状態)になり、かつ他系統への送電ができない場合は相当量の再エネ抑制が発生しています。
ところで期間後半の連系線により送電された電力はどこへ行っているのでしょうか。行先はほとんどが北陸、関西の2エリアです。

| 図5.3 北陸エリア2023年4月1日-7日 |

| 図5.4 関西エリア2023年4月1日-7日 |
これら2エリアでは5日から7日にかけて極端に再エネの発電が少ない状態でした。5日は連系線潮流により需要への供給と蓄電池のSOC回復を行いましたが、再エネ発電量の不足と夜間の需要への供給のため蓄電池SOCがゼロになった6日7日はわずかな再エネ発電と連系線による受電(ゼロより上側の薄茶)で需要を満たしているのがわかります。
(2)事例2:蓄電池SOCがゼロになり需要しゃ断が発生しているケース
9月は需要が大きいのに比較して再エネ発電が不足する場面が多く、需要の抑制が発生しています。東京、北陸、関西の3エリアの9月5日から11日の需給は以下のようになっています。

| 図5.5 東京エリア2023年9月5日-11日 |

| 図5.6 北陸エリア2023年9月5日-11日 |

| 図5.7 関西エリア2023年9月5日-11日 |
再エネ発電量は需要より大きい時間帯もありますが、期間の初めから再エネ発電量が不足しており、蓄電池SOCもほぼゼロレベルになっています。再エネ発電が需要を上回る時間帯は蓄電池を充電することができますが、充電量が不足しているため夜間から早朝の需要に供給する余力まではなく、赤紫で示される需要のしゃ断が発生します。この期間は他の系統でも同様の状況にあり、蓄電池SOCはぎりぎりの状態ですので、夕方の需要には多少貢献できても、夜間に他系統に送電する余力はほとんどありません。
(3)事例3:再エネ発電量が非常に不足するケース
2024年1月は北陸、関西エリアは再エネ発電量が非常に少なく、期間中は需要がしゃ断されるか、連系線による受電のみで需給を行っている様子がわかります。

| 図5.8 北陸エリア2024年1月1日-31日 |

| 図5.9 関西エリア2024年1月1日-31日 |
北陸エリアでは再エネ発電が非常に少なく冬期の大きな需要にほとんど達していません。また関西エリアでも絶対量が少なすぎます。このため、蓄電池はほとんど充電されず、他系統からの受電か需要のしゃ断により需給バランスが取られています。
この期間、需要が小さい四国エリアは再エネ発電が大きいものの、それでも昼間の再エネ発電が小さい日は夜間の需要を満たすことはできず、需要のしゃ断が日常的に発生しています。

| 図5.10 四国エリア2024年1月1日-31日 |
(4)事例4 特定のエリアだけが再エネ不足になる事例
この検討においては、1年間とおして北陸エリアの再エネ発電量が不足するケースが多く、とくに2024年2月においては他のエリアに比べて不足が目立っていました。

| 図5.11 北陸エリア2024年2月1日-10日 |
2月5日にいたっては、ほとんど再エネ発電がなく、他エリアからの融通もないことから終日需要のしゃ断が発生しています。蓄電池SOCがほとんどゼロであることから、期間をとおして他エリアから受電して蓄電池を充電することもできなかったことがわかります。これは四国エリアの蓄電池容量の不足が原因ではなく、他エリアも含めて再エネ発電量が十分ではなかったことによります。
これらの結果を見ますと、これだけ大きい容量の蓄電池を用意しても、全系の需給を調整し切れていないように思われます。もちろん再エネの発電量には地域差があり、これにより不足しているエリアは充足しているエリアから送電を受けて需給が安定化される傾向はみられますが、もし今回の前提である連系線容量無制限ではなく比較的小さい値に制限すると、一度に大きな電力を送電することが不可能になり、全国的な調整の能力は下がりますので、需要のしゃ断すなわち停電が実施されます。これを防ぐためにはより大きな蓄電池出力と容量が必要になると考えられます。

