再エネ主力時代の需給運用と計画(5-1)調整設備の考慮にあたっての整理
前章では需要を賄える量まで再エネ発電量を拡大して発電したときの様相を見ました。これによれば需要と供給(発電量)はほとんどいつもどちらかが多すぎ、他方は少なすぎるため、多い方を減らして需要と供給を一致させる必要があることがわかりました。しかしそれではほとんど常にしゃ断(停電)される負荷(需要)や抑制される再エネがあることになり、非常に不都合があるため、2つの量を調整するための設備が必要です。その調整設備を新しく用意しなければならないわけですが、その建設にあたってどのようなことを考えなければならないのでしょうか。
調整のために必要な設備の特徴は具体的に大きく分けて2種類あります。
一つは離れたところに電力を届ける能力を持つものであり、代表的なものとしては送電線があります。送電線は発電された電力を、それとは異なる地点の需要まで運ぶための設備です。もし、同じ地域内で需要に発電された電力を運ぶだけで全体として過不足がなければいいのですが、実際には地域全体として電力の過不足があるのはこれまで見てきたとおりです。もし地域内で不足している電力を、他の余剰がある地域から持って来ることができれば、全体として無駄になる停電や発電機の抑制は少なくできます。そのために作られる送電線は地域間を結ぶものとして特別に連系線と呼ばれます。連系線は停電や電源の抑制を避けるためだけでなく、大抵は連系線を利用することにより、他の地域からより安価な電力を持って来る用途に使用されます。停電や電源の抑制を防ぐことも、送電線以外の設備を用意するより金銭に換算するとより安価な結果になるため、送電線は経済的なメリットがある場合に作られて、その目的のために使用されると考えてよいでしょう。もし、安価にならないのであれば、連系線は余計なコストを生むことになりますから、この余計なコストは電力系統が利用する需要家(電気の使用者)または発電事業者が負担することになります。また、連系線により周波数や電圧などの電力の品質を高め、もし設備に異常があった場合に備えた余分の設備を省略することもできるなどの利点もあります。
また、もう一つの性質は電力を何らかの別のエネルギーとして蓄えておいて、必要になったときに電気エネルギーとして発生させることです。これができるのは例えば蓄電池が代表的ですが、他にも水を利用して大量のエネルギーを蓄えることができる揚水発電設備は既に現役として長年活躍していますし、水素を使った蓄電設備も研究されています。
この蓄電設備はエネルギーを望む時間に電気に変換することができるという点で、様々な用途に利用することができる優れたものですが、一般的に設備を作り、メンテナンスするにはコストがかかるということには注意が必要です。うまく使用しなければ設備のコストが、停電回避や発電量の抑制回避で得られるコストよりも高価になってしまう可能性もあります。もっとも停電が起こると私たちの生活は大きな影響を受けますし、その影響の重大さは電気がどのような使われ方をしているかによってまったく異なりますので、1kWh停電するとその損害がいくらに相当するというような計算は非常に難しいというのが現実です。そのため、蓄電設備はまずは停電させないという用途に優先して使用することが必要で、これは電力系統のすべての利用者の便益(電気を使用することにより得られる便利さや快適さという利益、電気を利用し、また発電することにより得られる金銭的な利益)を最大化するためにも役に立つ考え方です。
従って、再生可能エネルギーが主力となった系統運用においては連系線や蓄電設備をいくらでも作るという選択肢はありません。あくまで全体の便益が向上する範囲内で用意することが必要です。
ただ、便益を数値化することは上にも書いたように難しいため、例えば停電量がどれだけ少なくなるかだとか、再エネの発電抑制をどれだけ少なくできるかを判断基準に、連系線や蓄電設備の容量がどの程度必要かを続く説明内で解説して行く予定です。
お知らせ 後ほどnoteにも同趣旨の解説を投稿する予定です。noteの記載はフルバージョンです。

