再エネ主力時代の需給運用と計画(4)
4.需給バランスの実態
ここでは発電量を拡大した再エネと需要のみがある場合の需給の関係について説明します。
前章で述べたように、需要に対して必要な再エネ(風力・太陽光)発電量を用意したものとします。つまり再エネの2023年度実績発電量の8.2倍が毎時各エリアにおいて発電されたとしてその需要と供給の関係について見てみて行きましょう。
日本全国は、系統が繋がっていない沖縄を除くと9エリアのそれぞれの送配電事業者により需要と発電のバランス(均衡)を確保するように運用されています。ここではその中から、太陽光発電に加え風力発電も多い北海道エリア(Area A)、現状(ここでは2023年度)では再エネ発電量が中程度で需要が大きい東京エリア(Area C)、現状で太陽光の発電量が大きい九州エリア(Area I)の3地域を例として説明します。
まず北海道エリアの一年間の需給の実績は図4.1のとおりです。

図4. 1北海道エリアの需給バランス(年間)
赤線は需要(2023年実績)、水色の線は再エネ発電量(実績の8.2倍)、灰色の点線はその1時間の発電量マイナス需要を示したものです。プラスなら発電量が需要より大きく、マイナスはその逆であることを示します。横軸は2023年4月1日0時台からの1時間単位の累積時間を示しています。このグラフでは一番右端の2024年3月31日23時台までが描画されています。
図をながめると一目瞭然ですが、最大発電量は最大需要を大きく超えています。これは太陽光発電を考えると当然で、夜間や雨などの日射量の少ない時間帯にはほとんど発電しないので、その分を昼間に大きく発電しておかなければ1年間の需要総量に必要な発電量が確保できないためです。図4.1では横軸が詰まりすぎて毎日の変動がよくわからないので、例えば再エネ発電量が最大になっている4月後半を図4.2に示します。

| 図4. 2北海道エリアの需給バランス(2023年4月20日から29日) |
図中最初の山が4月20日、最後が4月29日です。この期間、需要は昼夜通してあまり変動がありませんので、発電量が大きい日はその発電量のほとんどが余剰となっています。一方発電量が小さかった26日は発電と需要がほぼ同レベルとなっていますので発電量が過剰であったり、需要が過剰になっている程度が小さくなっています(点線が0のラインの近くにある)。
このままですと供給(発電)と需要が常に同じ値になるには、この過剰になった発電分は需要に見合うように制御(抑制)されます。また夜間は需要の方が大きいので、発電量が足りない分は需要が抑制(=しゃ断)されます。これでは現在と同じような日常を暮らすことはできませんね。しかも抑制された発電量は発電が足りない別の時間帯に活用したり、抑制された需要は発電量が余っている時間帯に抑制せずに使用することができるはずです。このためには発電・需要を適当な時間へ移動することが必要です。しかし日射があるときしか発電できない太陽光発電を夜間に発電させることは現実的には不可能ですし、また風がない時間帯に風力発電を行うのも不可能でしょう。同じように暑いときに必要な冷房を暑くない別の時間帯に使用するのははたして有効なのかが疑問です。これを解決する直感的な発想は余剰の発電量や需要を別の時間に移動する蓄電設備、例えばバッテリーを大量に設置することです。
次に東京エリアを見てみます。

図4. 3東京エリアの需給バランス(1年間)
東京エリアの実績再エネ発電量は少ないので、その8.2倍の発電量は、需要に対して相当に小さいです。それでも最大発電量は実に125GW(125,000MW、1億2千5百万kW)程度も必要です。東京エリアではほとんどの時間帯で供給より需要が大きく、しかも再エネ発電量がないか小さい時間帯は抑制される需要が膨大(最大で4千万kW程度)になります。
次に太陽光発電の比率が高い九州エリアの状況を見てみます。

| 図4. 4九州エリアの需給バランス(1年間) |
九州エリアで2023年度に実際に発電された太陽光発電量は大きいため、全国の必要量の充足に必要な倍率8.2倍に拡大するとかなり発電量が大きくなる場面がたくさん現れます。しかし、需要(赤線)の平均的な量と発電量(水色の線)が少ないとき(夜間・荒天時など)に必要な需要制限量(しゃ断量。ゼロより下にある灰色の点線)の平均的な量はほぼ等しく、全地域に共通する問題ではありますが太陽光発電がなければ負荷は全しゃ断になってしまいます。
この章の前半で述べたように、エネルギー有効利用の観点からも、極力停電させないという観点からも、需要と発電を調整する何らかの仕組みが必要だろうと考えられます。アニメの世界で描かれている風の谷に似た需給システムでは、少なくとも電気が使用できない時間が多すぎます。風の谷のように常時風速が大きく、需要もそれ程大きくないのであれば必要な蓄電設備は限られるかもしれませんが、日本全体だとどうでしょうか。
実は上記の説明では全国で必要な発電量を各地域一律に増やすものと仮定していますので、地域毎に過不足が出るのは当然です。実際には連系線と呼ばれる地域間を結ぶ送電線により過不足を補うように電力が送電されます。上記の数値は連系線がないものとして説明していますので、次章以降ではそれも考慮した結果について調べて行きたいと思います。

