再エネ主力時代の需給運用と計画(3)

3.需要を充足する供給力の見積もり

 ここでは、電気の使用量(需要)に必要な発電量(供給)をどう考えるかを整理します。

 需給運用を行う上で、交流系統では毎瞬時の需要と供給が一致しなければなりません。これは同時同量と呼ばれています。実際には需要を予想して同量になるように発電量を準備します。それでもどうしても差ができてしまいますので、なんらかの調節機能が必要です。これは調整力と呼ばれます。需要と供給に差がでると周波数が標準周波数(東日本では50Hz、西日本では60Hz)から上下に変動します。そこでこれを検出して自発的にまたは給電所から指令を出して需要や供給の量を調節する仕組みになっています。しかし再エネはほとんどが天気まかせで発電し、需要は電気の使用者が基本的には必要なタイミングで必要な量を使用します。火力発電は出力を比較的容易に変更できますので、これまでは調整力として活用されてきました。しかし再エネが大多数になると、発電による調整は難しくなってきます。実際には需要もある程度調整できますが、限度があります。そこで現在最も有力視されているのが蓄電池を初めとした蓄電設備です。蓄電設備の放電量や充電量を調節することによって同時同量を実現するのです。しかも蓄電設備は充電・放電の出力の大きさや蓄電量の大きさによって、極短時間から相当長期にわたっての調整が理論上は可能です。ここでは手始めに1年間の需要と、PVと風力による供給を一致させることを考えます。その他の電源は必要に応じて今後追加して考えることとします。ちなみに蓄電設備は充電と放電が可能ですが、充電して蓄えられた量以上に放電することはできないので、電力量のバランスには最終的に発電設備であるPVと風力の発電電力量が必須です。また電力を充電、放電、送電するとおおむね数パーセント程度の損失がかならず発生することは覚えておきましょう。そして送配電設備は離れたところにも電力を供給し、電力貯蔵装置は充電した電力を後々放電することができるという意味でこのふたつの組合せは電力または電力量の時空間移動設備であると考えられます。これによって時間的、空間的に離れた時間や場所にわたって需給を調整することができます。それではどの程度の発電量があればよいのでしょうか。

 直近の利用できるデータとして、2023年度の各一送エリアの需要と供給の実績が公表されています。それによれば、連系されていない沖縄を除く九つのエリアの合計は、需要が854.4TWh、PVと風力の供給が104.2TWhです。ちなみにTWhは電力量の単位で、テラ・ワット・アワーと通常読みます。読者に馴染み深いkWh(キロ・ワット・アワー)で表すと8,544億kWhです。(数字を並べると854,400,000,000kWh)

 現在(ここでは2023年度)のPVと風力の実績発電量は需要よりも大幅に足りないので、ここではこれを需要に合わせて数字上増量します。全国(沖縄を除く)の需要を供給で割った値は8.20ですから、沖縄を除く全国の需要に対して持つべき最低の供給力は現在の再生可能エネルギー発電量の8.20倍であることがわかります。ただし、前述のように実際には送配電においても蓄電池への充放電においても電力損失があるのでこれを考慮する必要があるのですが、簡単のため電力損失はないものとして以下計算します。

全エリアでこの倍率(8.20倍)を使用することは可能ですが、エリアによって需要/供給の値は相当に異なります。そのためエリア毎に必要倍数を計算してみると図3.1のようになり、需要に対して再エネが大量に導入されている北海道、東北、四国、九州では倍数は低く、再エネの導入が需要に対して少ない北陸、関西では特に倍率が高くなっています。図中のアルファベットはそれぞれ送配電会社のエリアを示しており、Aが北海道、以下Iが九州まで順に記号化しています。これは慣例によったもので特に意味はありません。
 どちらの考え方で再エネ発電量(=設備)を増量しても、需要と供給の時間的な変動の仕方(プロファイルと呼ぶこともあります)が異なるため、一エリアで常時バランスすることはありません。従って結局蓄電設備の充放電量も含めて供給量が余剰となっているエリアから不足のエリアに連系線を通って潮流が流れ、供給力の過不足が補われることになります。

図3.1 2023年度の需要・再エネ供給実績と再エネ必要倍率
図3.1 2023年度の需要・再エネ供給実績と再エネ必要倍率

 ところで、この倍率というのは結局のところ現在の再生可能エネルギーの設備を増設して実現されるものですので、なるべく需要に近接したところで供給力を持つべきと考えるならエリア毎の倍率を用いることが望ましく、一方で再生可能エネルギーのこれ以上の増設余地がこれまでの再生可能エネルギーの開発実績と深い関係があると考えるなら全国一律倍率という考え方がふさわしいかもしれません。